日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse3~|(27)那須岳~飯豊山
那須岳
3月3日。冬の那須岳は風が強いと聞きます。当初から那須連山は可能なかぎり縦走を計画していましたが、今日の晴れ予報も一日のみ、ましてや麓は晴れていても肝心の山は暴風。今日は下見を兼ねて、風の陰となる高尾口登山道から茶臼岳を目指します。由緒ある那須温泉神社にて参拝をしてから登山開始。牛首へと続く登山道を登ります。飯盛温泉跡前からはスノーシューで踏み締めながら灌木を縫うように谷間を登りました。次第に空の雲が途切れ途切れとなり、切れ間から茶臼岳山頂が顔を出してくれました。風もほんの少し弱まった感じが。牛首の手前で山腹を南へ巻くようにトラバース。ロープウェイ山頂駅との合流点から山頂へ。そして茶臼岳のお鉢へ合流。山頂は風が強く雲に包まれて展望はないですが、6年ぶりに那須岳本峰茶臼岳へ登頂しました。出発時の予想よりも風が弱かったため、登ったというよりも登れちゃったという感じ。山頂の神社にて参拝したのち、お鉢を周回し、那須岳で一番風が強くなるという峰の茶屋を経由して、峠の茶屋方面へと下山しました。
3月7日、ようやく那須岳特有の風も静まり、荷をまとめて那須主脈縦走に向けて出発。先日登った茶臼岳からの下山ルートを登ります。峠の茶屋~峰の茶屋へと続けて登りました。縦走初日の最大の難所は、朝日岳への登り。那須岳の中でも一番の岩尾根が山頂直下まで続き、切り立つ岩肌と秀麗な姿に登山ファンが多いそう。風が強いため積雪はほとんどないですが、所々雪が固くなっているためアイゼンは欠かせません。朝日岳山頂への分岐点に着くと、その先は優しい緩やかな曲線の主脈縦走路が続いていました。そして朝日岳登頂。東側が切れ落ちた深い谷の奥には、本峰の茶臼岳が見えます。あまり長居はせず分岐点へと戻り、最高峰の三本槍岳へと雪原を進みます。最高峰の三本槍岳山頂は、たくさんの登山者が景色を楽しんでいる様子。山頂は風が強いため、写真だけを撮って先へと進みました。前方のかっこいい姿の旭岳が度々目を奪いました。縦走するのは昨年11月の朝日連峰以来となり、縦走の細かいアップダウンに息が上がり体力も予想よりも消耗。予定通り出発から7時間で坊主沼の避難小屋に到着しました。
3月8日、縦走2日目は昨日から一転して、朝から降雪。前日、旭岳へと登りにきた登山者の足跡を参考に甲子山へと登ります。そこから先は誰も歩いた痕跡がない道のりです。大白森山では灌木に行く手を遮られて悪戦苦闘しましたが、その先は二杯山、一杯山、小白森山と順調に登り下りました。出発から6時間で二岐温泉へと無事に下山できました。
二岐山
3月9日、二岐山の御鍋神社登山口へと林道を出発。雪は少なく、谷間に差し込む日差しは春の暖かさ。その名の通り、大きな鉄鍋が社の前に逆さまで吊り下げられているという神社に参拝しました。実物を見るとかなり大きな鍋。この地に落ちのびてきた平将門一行にゆかりがある神社とのこと。ほどなくして登山口となり、登りはじめから急登です。体の疲れはありましたが、体はしっかりと動いてくれて、縦走の時よりも力強く登ることができました。40分ほどで最初の急登を終えてブナ平に到着。ブナ平からようやく左右対称のキレイな形をした二岐山最高峰の男岳を見上げました。青空にくっきりと見え、とてもこの先に一番の急登があるとは思えません。少し休憩した後に男岳へと登りはじめると、あっという間に斜面はどんどん急に。汗が噴き出し、息が上がります。最後は灌木をかき分けて山頂へと立ちました。出発が1時間遅れたため那須連山にはすでに雲がかかってしまったが、西側は素晴らしい眺めでした。時間とともに東からの風に乗り雲が湧いてしまったため、ゆっくりせずに女岳へと向かいました。男岳より少し低い女岳には、平成元年に山頂で結婚式をされた方の記念樹がありました。記念樹のあすなろに触れて願うと幸福が訪れるそう。その後、女岳からの急な下りに足をとられながらも無事に下山しました。
飯豊山
3月14日、総重量が20キロを軽く超えるパンパンのバックパックを背に、夜が明けて間もない時間に出発。3ヶ月半、常に頭で大きな存在となっていた冬の飯豊山。縦走したい気持ちが強かったですが、身を持ってどれほど可能性が低いことなのかを知りました。早足で登山口の川入へ向かい1時間20分で到着、さらに御沢登山口へと林道を奥へ入りました。スノーシューを履いて、急な長坂を登りました。気温が高いためか、低い雲が山を包んでいました。宿出発から5時間程で地蔵山を越え、そこから先は今回のルート上で一番の難所の「剣ヶ峰」、夏場は急峻な岩稜です。そこに雪が積もり、名のごとく刃先のような雪稜。さらに厄介なことに、東西に延びた尾根のため、左右に大きな雪庇ができるそう。細く切り立っているため雪庇を踏み抜く可能性が高いルートです。視界20メートルの中を慎重に進み、GPSを確認しながら徐々に標高を上げていきます。ゆっくりゆっくりとスノーシューで登ってきましたが、さすがにこの先は難しいと判断してアイゼンとピッケルに切り替えました。地蔵山から1時間で無事に最難関を突破。1日目は三国岳避難小屋までとしました。
3月15日、4時半から1日がスタート。少し軽くなったバックパックを背負い、ヘルメット、アイゼン、ピッケルを装備して6時半に三国岳避難小屋を出発。昨日より視界は良いですが、飯豊山方面は雲に隠れて全く見えません。歩きやすい雪庇の上を避けて、雪面から出た灌木を目標に縦走。飯豊山までの約半分となる切合小屋に、出発から1時間程で到着しました。雪質は表面が固く凍っていたためスノーシューは必要なく予想よりも早い到着でした。切合小屋を過ぎると長い登りとなり、一気に標高が上がります。頂上手前の本山小屋には切合小屋から1時間半で到着。標高2,000メートルを超えるのは久しぶりです。小屋の中に入って少しの間風を避けました。10時過ぎに回復を信じて山頂へ向かいました。待ちに待った登頂でしたが、山頂は雲に包まれて真っ白。回復を待つこと30分。風が次第に弱くなりはじめ、北から吹き上げていた雲が晴れてきました。見上げる山頂の空は真っ青!冬の飯豊連峰が目の前に広がりました。再び山頂に立ち歓喜しました。飯豊山山頂に立たせてもらったことをしっかりと感謝し、名残惜しさを抱いて三国岳避難小屋へと戻りました。天気予報を見ると下山が遅くなっても今日中に下りた方がいいのは明らかでした。小屋に残置した荷物をバックパックに詰め込み、最後の難所「剣ヶ峰」を下りました。後半は重装備での長い一日で、疲れもたまり膝が笑っていました。
<過去の記事>
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(26)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(25)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(24)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(23)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(22)
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