日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse3~|(15)愛鷹山~笈ヶ岳

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愛鷹山

愛鷹山は愛鷹山地の総称ですが、山地の南端には標高1188メートルの愛鷹山があります。字も読み方も同じですが愛鷹山を登る場合は最高峰の越前岳を目指す人がほとんどです。2百名山の時は最高峰だけを登ったので、今回は愛鷹山地を縦走しようと考えていました。2月27日、愛鷹山へは柳沢コースを登っていきます。富士山は朝から見えず、1日がかりで愛鷹山を縦走するので、見ることが出来るタイミングがあると信じて登りました。愛鷹山山頂の愛鷹明神の奥社で挨拶をして、雲の隙間からうっすらと見える富士山に一喜一憂しながら、袴腰岳、位牌岳へと縦走しました。位牌岳から鋸岳へは崩落により通行禁止になっているため、前岳経由で一度大沢まで下山し、再び呼子岳へと登り返す変則的なルートで越前岳へと縦走を続けました。富士山は結局、最初の愛鷹山で見えたきり下山まで見ることができませんでしたが、富士山が見えないことで、しっかりと愛鷹山と向き合えた気がしていました。

野伏ヶ岳

3月20日。今回、この旅では初めて山スキーを採用します。ずっしりとしたバックパックを背負い、スキーを担いで登山口まで歩きます。中居神社で挨拶をしてから林道へ。早速スキーを履きましたが、前半は脱着を繰り返しました。標高が上がるにつれて雪は増え、旧牧場跡地に出ると見事な雪原と、去年とは全く表情の違う野伏ヶ岳が目の前にそびえていました。コンディションが良かったためか平日でも登山者は多く、皆それぞれに選んだ方法で登っていました。長靴のおじさんはすごく早く、あっという間に追い抜かし、あっという間に下山していきました。明らかにいつもよりは時間がかかっていましたが、骨折で登ることができなかった山へ、年を跨ぎ季節を越えて登ることができていることが嬉しいです。林道の入り口から3時間半、ようやく登頂。夏場は深い笹藪に覆われているはずの山頂は真っ白いステージです。標識もなく、見渡せば半年前に登った山々が別人のような姿で迎えてくれました。白山はやっぱり真っ白です。山頂で2時間のんびり過ごしました。そして最大の緊張の時間、山頂からの滑降です。もちろん初めての経験。あまりの暖かさに雪崩のリスクも高いため慎重に滑り出しますが、荷物が重いためにターンもままなりません。本来ならあっという間に下ってしまうはずですが、慎重になりすぎたためか下山に2時間もかかってしまいました。

猿ヶ馬場山

3月25日。3日前の雨で雪が一気に溶けてしまい雪が少なかったため、スキーでの登山を断念し、アイゼンとワカンを携えて登ることにしました。前日にほんの少しだけ雪が積もったおかげで気持ちのいい雪山登山です。山頂までの道のりは、前半は急な尾根道でしたが、後半は緩やかに標高を上げていきます。杉林からブナ、ダケカンバ、オオシラビソの原生林へと変化していく植生のコントラストが美しいです。標高が1500メートルを超えると、オオシラビソやダケカンバの枝葉にビッシリと霧氷が着いていました。太陽の光が当たるところからカラカラと音をたてて落ちていきます。のっぺりとした山頂部は、夏場では決して見ることができない展望が迎えてくれました。振り返れば真っ白な両白山地の全貌が露となり、山頂に立つと昨年縦走した北アルプスが屏風のように広がっていました。風も穏やかで、背中に当たる日差しが「山頂でゆっくりしていきな」とばかりに体を温めてくれます。山は四季折々に様々な表情を見せてくれますが、この山はこの時期に登ってこその猿ヶ馬場山だと感じました。

笈ヶ岳

4年前、大笠山より往復7時間以上の藪こぎを続けて登頂し、「もう2度と来たくない…」と溢れました。実はあの言葉には続きがあり「もし次来るときは雪があるときに」と言っていました。その山へ明日再び登ります。3月26日8時、三方岩岳へと続く急登が始まりました。3日分の食料を背負い、今年一番の重装備のため、序盤から大量の汗をかきました。標高が上がるにつれて見渡せる景色もどんどん広がっていきます。振り返れば北アルプスが遠くに見え、見上げれば飛騨岩や主稜線の荒々しい斜面が迫ってくる感じです。3時間ほどで三方岩岳へと到着。先を見ると、目的の笈ヶ岳、懐かしい大笠山が目に写ります。12時半に宿泊予定地の国見山に到着。翌朝に雪洞から朝日が昇る北アルプスを見たかったため、少し標高の高い東向の斜面に掘ることにしました。3時間かけて立派な雪洞を掘りました。
3月27日。昨晩、雪洞の上に落雷がありました。すごい衝撃が脳天から突き抜け、体がこわばってしまい寝坊してしまいました。入り口を塞ぐスノーブロックのすき間から光が差し込み慌てて崩し出ました。ぎりぎりセーフ!北アルプスの上から、神々しい太陽が現れました。予定よりも1時間半遅れて7時半に国見山を出発。139座目の笈ヶ岳へと緊張感漂う縦走が始まりました。クラックが走った雪庇、ナイフリッジな雪稜、固くしまった斜面のトラバース。集中力を維持し出発から2時間半で4年ぶりに笈ヶ岳の山頂に立ちました。山頂碑に手を合わせ、4年前のお詫びと登頂させていただいたことのお礼を伝えました。両白山地の主稜線に打ち付ける風は「今回も早く帰りなさい」といっているようで、10分程のわずかな滞在でしたが感無量です。帰りは1時間半ほどで国見山に到着。雪洞の中に置いてきた荷物をバックパックに詰め、急ぎ足で三方岩岳へと登り返しました。宿に無事着いたとき、張り詰めていた緊張感が切れたためか、疲れがドット吹き出しました。そして、大きな安堵に包まれていました。これでようやく、後ろを気にせずに北上していくことができます。

 

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