日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse3~|(25)磐梯山~一切経山
磐梯山
1月6日、今日の目的は磐梯山登頂ではなく、雪の状態確認とトレースをつけること。灌木帯を抜ける標高までは登る予定です。スキー場から20センチほど降り積もったゲレンデ内を登り、1時間程でリフト頂上に到着。そこから登山道に合流し、狭く急な斜面を登ります。森林限界となった標高1500メートルまで登るのに1時間以上。磐梯山は別名会津富士とも言われ、会津盆地から見ると富士山のように円錐状になり山頂が近づくにつれて傾斜は急になります。山頂まで標高差300メートルの地点までで下見を終えました。
1月7日、夜明けと共に出発。見上げる空は快晴、風もなく、予報以上のコンディションとなりそうです。昨日と同じルートで磐梯山へ。昨日の半分の時間で、1500メートル地点まで到着。振り返れば、朝日に輝く猪苗代湖と、白い会津盆地が見えます。さらにその奥には、日光から越後と会津の山々がずらり。火山らしい岩むき出しの急斜面をさらに登っていきます。出発から3時間ほどで登頂。山頂からは懐かしい朝日連峰や月山、相変わらず一際白く裾野を広げる飯豊連峰、そして次に目指す吾妻連峰が見渡せます。眼下には、桧原湖や裏磐梯の躍動感溢れる姿が。ひと休みの後、中ノ湯小屋跡経由で、裏磐梯へと下山しました。
西吾妻山
1月11日、昨晩の予報では、夜から晴れとなり日中まで続くとありましたが、どうやら回復が遅れているよう。支度を整えて7時に小屋を出発。まずは吾妻山の神様に挨拶へ。30分ほどで鳥居らしき建物が見え、挨拶と感謝を伝えることができました。天狗岩を越えて梵天岩まで行き、風下に穴を掘ってジッと雲が晴れることを待ちました。地図にはこの場所から吾妻連峰が一望できるとありました。待つこと1時間、太陽の光が吾妻山に差し込みました。曇っていた心も一気に晴れて、気分も一気に上昇。振り返ると、目指す吾妻連峰最高峰、西吾妻山がドンと目に飛び込んできました。さらに、山を取り囲むようにおびただしい数の大小様々な形の樹氷が。つい1時間前とは全く違う景色に感動し興奮しました。山頂へと最後の斜面を登ると、スノーモンスターと言われることが良く分かりました。どれひとつとして同じ形の樹氷はなく、見る角度によって不思議と動物や恐竜の姿にも。今にも動き出しそうで、近寄るとその大きさにも驚きました。山頂のスノーモンスターたちと戯れるようにウロウロしながら、一時を楽しみ、12時過ぎに名残惜しくも西大巓へと引き返しました。真っ白だった世界が広がり、別世界を歩いている感覚は早稲沢へと下山するまで続きました。
安達太良山
1月17日、8時に出発。4日前に下見した時より、ほんの少しだけ積雪が増えたスキー場を登ります。雪が少ないため灌木や藪は完全に雪には埋もれず、1500メートル付近からは雪と氷で固まった灌木が登山道に倒れこみ、トンネル状になっています。なりふり構わず、無数のトンネルを這いつくばって、雪まみれになりながら進み続けます。出発から3時間で障子ヶ岩に到着。そのままホワイトアウトの中、船明神山まで止まらずに進みます。コースタイム1時間ほどのところまで来ると、風が一気に強くなり雲が風下に吹き飛んでいきました。それまで全く見えなかった安達太良連峰の主稜線が直ぐ目の前に広がります。冬の安達太良山をじっくりと踏みしめながら山頂へと近づきます。稜線の大小の岩に張りつく霧氷は芸術的な形、絶え間なく強い風が吹き続けている証拠です。安達太良山の山頂には「乳首」という大きな岩があり、その上には石造りの祠があります。乳首へと登り、249座目となる安達太良山へと無事に登頂させていただきました。
一切経山
1月19日。この旅をスタートした時は、浄土平周辺の火山活動が活発なため規制レベルが2とされ、一切経山への登山は禁止されていました。その後規制レベルが1に引き下げられて、一切経山までは登ることが可能に。この時期に高湯温泉から一切経山へ登る人は少ないそうですが、登山口に着くと先行する二人の足跡。先行する登山者のトレースを辿れるので、少しだけ気が楽になりました。喜んだのもつかの間、30分ほどで先行する登山者を抜かしてしまい、不動の滝から先は一人ラッセルです。上空の雲の動きは早く、雲が晴れる気配はありません。とにかく上へ上へ。登頂できなければ下見登山となり、登頂できれば素直に喜べばいいと思いました。ラッセルは続きますが、風はほとんどなく静かな登り。慶応小屋への分岐を過ぎると、上空の雲は一気に晴れてきました。出発から3時間で、夏場コバルトブルーに輝き「魔女の瞳」とも呼ばれる五色沼外輪山の上へと到着。五色沼を左に見ながら回り込み、一切経山最後の登りへ。標高1900メートル付近で木々は一本もなくなります。山容は西吾妻山に似ていても植生は全く違います。そして区切りの250座目へ登頂しました。
<過去の記事>
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(24)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(23)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(22)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(21)
- 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」⑳
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