日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse3~|(23)金北山~杁差岳

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金北山

11月4日、夜中降り続いた雨は夜明けとともに止み、両津湾を昇る太陽が眩しく海面を照らしていました。佐渡島2日目も気持ち良く晴れそうです。そして、いよいよ佐渡島まで来た最大の目的へと近づきます。ドンデン山荘より7時過ぎに出発。大佐渡金北縦走入口から登山道へ。遠回りにはなりますが、初めての佐渡島を少しでも味わいたいと思い、展望が良いドンデン山荘からの縦走にしました。稜線を境に北側と南側の斜面の季節が全然違って見える景色の中を抜けていきます。風が強く抜ける場所では、灌木帯から何度も景色が開ける瞬間がありました。アップダウンを繰り返しながら少しずつ標高を上げ、遠くに見えていた金北山も見上げるようになってきました。すでに使用されていないレーダー基地に挟まれて建つ金北山神社の真下に、出発から4時間で到着。233座目ということで、233円を賽銭して、手を合わせ初登頂のお礼を伝えました。山頂にてのんびりと眼下の景色を眺めながら、登頂の喜びを噛み締めます。黄葉の森を抜けて、見下ろしていた国中平野へと無事に下山。振り返ると見事な虹がかかり、金北山からの嬉しいプレゼントをいただいた気分でした。

二王子岳

11月10日、新発田市内の住宅街を抜けて、4年ぶりとなる二王子岳へ。4年前は奥胎内ヒュッテより、36度の猛暑の中を36キロ走り、その勢いのまま駆け上がりました。下山後に滝に打たれて体を冷やしたのが懐かしいです。今回は前回よりも季節は進み、晩秋と初冬の二王子岳。登山口の二王子神社までは宿から15キロ、往復だけでも30キロはあり、登山道をいれると40キロ近くなります。そのため出発からなるべく走りました。9時過ぎに登山口に到着。二王子神社にて4年ぶりに二王子岳へ登山をさせていただく挨拶をして、9時半に出発。大昔の神々の世継ぎ話を想像して、話ながら登っていきました。一王子神社、三王子神社を経由して、2時間ちょっとで山頂へと到着。山頂付近の灌木には霧氷がつき、二王子岳にももうすぐ本格的な冬が来ることを告げています。山頂には多数の登山者がいて、久しぶりに賑わう山頂に拍手で迎えられました。向かいの飯豊連峰は雲に包まれていて、明らかに雪が降ったように見えます。二王子岳山頂も、上空の太陽が遮られてなかなかの寒さでした。

摩耶山

11月13日、夜も明けぬ5時半に鼠ヶ関を出発。風は落ち着き、空には満月が輝いています。日本海沿いの国道7号線から、摩耶山の登山口がある関川の集落へと、国道345号線を走ってウォーミングアップ。走り続けること2時間半で関川の集落に到着。静かな山間の集落は紅葉真っ盛りで、見上げると紅葉の山の先に初対面となる摩耶山が見えました。標高は1020メートルですが、「やっぱり山は標高ではない」と思いながら、意外と険しい道のりを登ります。新発田市から一気にここまで約100キロを走ってきた疲労が両足の運びを重くしています。山頂手前の六体地蔵にて、それぞれに手を合わせてから山頂へ。登山口から2時間ほどで初登頂すると、見事な展望が広がっていました。目の前には朝日連峰、右奥には飯豊連峰、左奥には次に目指す月山が白く雪を被っていました。明日から今年一番の寒気が流れ込んでくるため、山々は今以上にさらに白くなることが分かっているだけに、心中は穏やかではいられません。山頂は風もなく、静かで、気持ちのよい小春日和。まさに「嵐の前の静けさ」といった心境。気持ちを切り替えて1時間ほどで下山し、宿へとさらに15キロを走りました。

月山

11月18日。今年も大幅なスケジュールの遅れから、月山を登るのは来年2月以降にしようと考えていました。しかし、飯豊連峰や朝日連峰からの雪の便りが届いたことで、スケジュールを再度変更、新潟県の山を後にして月山まで一気に北上することを決めました。見上げる月山は青空の下にようやく真っ白な顔を見せてくれました。午後から天気は崩れますが、午前中だけ安定していれば登頂し下山できると、昨日下見したことから、自信を持って予測ができていました。スタスタと2時間ほどで下見した牛首下に到着。まだ風もなく、振り返ると朝日連峰も朝日を受けて静かな風が流れているよう。牛首までは昨日よりも雪がしまっていたこともあり、ほとんど足が埋まることなくスムーズに登りました。最後の登りでは太陽の光で凍った斜面が輝いていて、慎重に足場を選んで登りました。山頂部は冷たく強い風が吹いていて、石碑や標識、山小屋やロープには立派な海老の尻尾がついています。山頂部は初冬ではなく、すでに厳冬期が来ていることを伝えていました。そのまま月山神社本宮へと進み、雪に包まれた本宮の前に立ち、手を合わせ5年ぶりのご挨拶と無事に登頂させていただけたことへの感謝をお伝えしました。

朝日連峰縦走1日目

11月22日、7時過ぎに登山道へ。標高が1000メートルを超えると積雪は30センチほどになりました。竜ヶ岳の手前から尾根を外れてトラバースになると、積雪は一気に増え、吹きだまりでは腰までの深さに。スノーシューを履いて再び尾根へ合流して、スピードアップ。しかし、その時間は長くは続かず、天狗角力取山手前で積雪50センチ以上、なんとかリミットの12時前に天狗角力取山へと到着。始めてみる初冬の朝日連峰は遠く長く奥深く見え、これから足を踏み入れていくことに怖気づきそうになりました。救いだったのは、弱気になる心を太陽が温め、風のない穏やかなコンディションだったことです。この日最大の登りは狐穴避難小屋直前の高松峰。まさかあそこは直登しないよな…と思っていましたが、案の定1時間後、その登りの前に立つことになりました。3歩登って止まり、3歩登ってを繰り返し、そこを越えるとあんなに小さく見えたはずの狐穴避難小屋がはっきりと、そして大きく見えて喜びが溢れました。4時半前に無事に山小屋へと到着しました。

朝日連峰縦走2日目、以東岳

11月23日、宿泊した狐穴避難小屋に荷物を半分ほど残して、237座目の以東岳へ。雪のコンディションは不規則で、全くない場所も有れば、たんまりと吹きだまっているところもあり、スノーシューを何度か着脱。登りになると昨日の疲れが全身に残っていることを痛感します。昨日は遠く急峻に見えた以東岳も、今日は近くどっしりと見えます。出発から2時間弱、4年前は暴風雨だった以東岳へと登頂しました。朝日連峰の北西一番端になる山頂からは、月山や鳥海山、飯豊連峰や遠く北アルプスまでも、微かに見えます。狐穴避難小屋へと来た道を引き返し、1時間半ほどで小屋へ到着。全ての荷物をバックパックへと詰め直し、再び20キロを超えたバックパックを背負い出発しました。昨日よりも気温が高いため稜線の雪は緩み、重たくなった雪がスノーシューや足にまとわりつき、体力をどんどん削っていきました。夏山シーズンであれば、あっという間に登れたり縦走できたりする場所が、そうはいかないのが冬山登山。西朝日岳~中岳と超えると、前方の雲が晴れて短い間だけ大朝日岳と直下の避難小屋が見えました。なんとか16時過ぎに2日目も計画の行程を無事に歩き切ることができました。

朝日連峰縦走最終日、大朝日岳、祝瓶山

 

11月26日、2日間の停滞を経て、5日目。お世話になった避難小屋の掃除を済ませて冷え込んだ外へ。食糧は停滞2日間でかなり減り、バックパックの重量もかなり減ったことになりますが、冬山装備はやはり重いです。2日間で周りの景色は様変わりしていて、たくさん降り積もっていた雪はかなり溶けてなくなってしまいました。6時50分に出発、登山道にわずかに残った雪は固く氷のよう。一歩一歩蹴りこみながら、10分ほどで山頂に到着しました。5年ぶりの大朝日岳の山頂、そして、2度目にして初めて山頂からの360度の展望に感動。冷たい風が吹き付けて、体は末端からどんどん冷え始めますが、心は嬉しさで温かかったです。登ってきた方向を振り返ると、こちらも始めてみる以東岳までの朝日連峰主稜線がくっきりと見えます。記念撮影などを終えて、祝瓶山への縦走路へ初めて足を踏み入れます。霧氷はまさに畑のようで、その奥には徐々に迫ってくる鋭峰、東北のマッターホルンとも言われる祝瓶山のかっこいい山頂部が。最低地点の950メートル付近まで標高を下げたら、鋭く尖った山頂へ向けて、容赦の無い急斜面が続きます。標高を下げて無くなった霧氷は山頂が近づくと再び見事に咲き乱れました。まさに白銀の花です。そして、朝日連峰の南端にあり、初めての祝瓶山山頂に立ちました。

杁差岳

11月30日、停滞の可能性も視野に2泊分の食料を背に出発。小走りで14キロ先の登山口を目指しました。林道もなるべく小走りで進み、積雪が無いことに、少しホッとしました。宿泊予定の避難小屋の水場は凍っているため、3リットルの水を補給。ずっしり重くなったバックパックに負けないように気持ちを強く、カモス峰への急登が始まりました。冬山で一度濡れてしまったウエアは乾きにくく、低体温症のリスクが高いため、汗をかきすぎないようにコントロールして進みます。さらに1000メートルを超えて、千本峰へ到着。スノーシューを履いて、前杁差岳にむけて、再出発しました。尾根の西側は出来立ての霧氷で、東側はマシュマロのようなフワフワ雪が木々を包み込んでいます。どんどん多くなる積雪量に悪戦苦闘しながらも2時間ほどで前杁差岳に到着、30分ほどで主稜線へと登りました。のっぺりした山頂はそこから間もなくして突然目の前に。山頂はさすがに強風となり体が冷えてきたため、さっさと山頂直下の避難小屋へとかけ降りました。寝に入る前に外へと出てみると、2時間前までの雲は晴れて、満点の星空と、眼下に新潟県の見事な夜景が広がっていました。予想もしていなかった光景に感動。寒い中30分ほど、冬の夜を味わいました。

 

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