雲から山の天気を学ぼう|(97)ジェット気流に伴う雲

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ジェット気流とは、ジェット機が飛ぶような高い空を吹いている強風帯のことです。風は南北で温度差が大きい所で吹くので、ジェット気流は、夏と秋の境目や、秋と冬/冬と春/春と夏など、季節の境目に現れることが多くなります。

今回、信州から名古屋へ向かう特急「しなの」の車窓からこの雲が見られました(写真1)。放射状に列を成して空に延びていて、鳥の羽根のような、なんとも美しい雲ですね。こういう雲を見かけると、「どうしてできたんだろう?」と山岳気象予報士としてはツイツイ調べたくなります。

写真1 車窓からジェット気流に伴う巻雲(けんうん)が見られた。

さて、ジェット気流の存在は、200hPa面(高度約11,500m)や300hPa(高度約9,300m)の天気図で見ることができます。今回は、300hPa面の天気図で見てみましょう。

図1 300hPa面の天気図

上図で、紫色の網かけの中で、色が濃い所がジェット気流がある所です。日本付近で2本に分かれており、ひとつは山東半島から朝鮮半島、日本海北部へと西から東に流れており、もうひとつは対馬海峡付近から瀬戸内海、名古屋方面へと流れています。暖かい空気は冷たい空気の上を緩やかに上昇していくため、赤い等温線を横切るように、気温が高い所から低い所へ風が吹いている場所では、上昇気流によって雲ができやすくなっています。特に、ジェット気流付近のように気温差や密度差が大きい所では、気流が乱れるので、色々な形の雲が見られやすいんです。ジェット気流によってできる雲をジェット巻雲と言います。

そんなエリアを飛行機が飛んでいるときは、飛行機が揺れます。客室乗務員が「気流が乱れているところを飛んでいますので、シートベルトをお締めください。」などというときがそれですね。飛行機が揺れるときは、窓から雲を見ると、面白い雲が見られるかもしれませんよ。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。

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