雲から山の天気を学ぼう|(96)雨あがりに見られる雲

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今回は、雨あがりに良く見られる雲の紹介です。雨が上がったときは、空気の中に水蒸気が満ち満ちています。空気は、もうこれ以上水蒸気が含めない、人間で言うと「これ以上、食べられないよー。」という状態になっています。そういうお腹いっぱいの状態のときに、雨によって土や畑に浸み込んだ水分が蒸発して水蒸気が空気中に出てくると、空気は水蒸気を含める限界を超えてしまうので、それを吐き出してしまいます。その吐き出した分が雲になっていくのです。写真1は、まさにそんなときに出来た雲です。

写真1 土や畑などから放出された水蒸気によってできた雲

写真2 森林からの水蒸気の放出によってできた雲

また、雨が降っているときや、雨あがり、霧がぱぁーっと晴れたときに上の写真のような雲が山から湧き出るように発生するのを見たことがあるのではないでしょうか。この雲を森林蒸散雲(しんりんじょうさんうん)と呼びます。
長く雨が降ると、雨は地上に落ちてくる間に少しずつ蒸発するので、空気中の湿度が高くなります。また、森に降った雨は木の幹や葉っぱから蒸発していくので、木がない場所よりも水蒸気が溜まっていき、空気の中は水蒸気でお腹いっぱいになっていきます。そして、含み切れなくなった水蒸気が雲に変わっていくのです。森に流れる神秘的な雲は、木々の蒸発散によって生まれているのですね。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。

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