雲から山の天気を学ぼう|(91)天気図と地図から天気が良い山を選ぶ方法

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今回は、天気図と地図から天候が良い場所を選ぶ方法についてです。

2024年2月19日に「山頂で観天望気講座」を竜ヶ岳(山梨県)でおこなう予定でしたが、2日前に同じ山梨県の九鬼山に変更しました。

理由は、当日予想される気圧配置から竜ヶ岳では雨と霧で視界が悪く、空や雲を見るのに適しないと判断したことと、九鬼山など山梨県東部も雨予報でしたが、地形の影響で天気の崩れが小さく、視界が効くので空を見ることができると予想したからです。

図1 竜ヶ岳、九鬼山の位置と駿河湾からの湿った空気の通り道

富士山麓の竜ヶ岳は、ダイヤモンド富士など富士山の展望台として知られる山です。空や雲を見るのにも適しており、富士山のどこに雲が発生するかや、雲の種類によってその後の天候を知ることもできるので、山の天気を学ぶツアーや、観天望気講座を過去に何度か実施してきました。

竜ヶ岳は駿河湾からの湿った空気が入りやすい場所にあります。これは奥安倍の山地と愛鷹山の間、富士川に沿って湿った空気が山に遮られることなく直接入ってくるからです。図1をご覧ください。今回のように南から南西の風が吹くと、駿河湾からの湿った空気はオレンジ色の矢印のように、竜ヶ岳方面や富士山、道志・丹沢方面へと流れていきます。

一方で、九鬼山は南西側に富士山があり、南から南南西側に道志山塊や三国山などがあるために南からの湿った空気が入りにくい特徴があります。そのため、下層(上空約2,000m以下)で湿った空気が入るときには、これらの山で湿った空気が堰き止められ、雨雲もこれらの山を越えるときに弱められます(ただし、低気圧本体の雨雲など、中層(上空約3,000~6,000m)の雲がかかる場合には、山より高い雲のため、これらの山を越えて九鬼山でも雨になります)。

その辺りを雨雲の動きで見てみましょう。

この雨雲の動きを見ても分かる通り、竜ヶ岳には強い雨雲が断続的にかかる一方、九鬼山にはほとんどかかっていません。実際に、登山中、雨がぱらつくことはあっても、傘や雨具を必要とする雨は降りませんでした。

写真1 青空が上空に見える時間も(2月19日 九鬼山にて)

上の写真のように、南側にある杓子山や御正体山を越えると雨雲が弱まり、青空が広がることもありました。

それでは、南~南西風が吹くことがどうして予想できたのか。

それは天気図を見ることで分かります。

図2 山頂で観天望気当日(2月19日)午前9時の天気図(気象庁ホームページより)

上図(図2)は、当日午前9時の天気図です。日本海西部には低気圧があり、東北東に進んでいます。一方、日本の東海上には高気圧があります。等圧線の間隔が込んでいきているので、高い山では風が強くなっていく気圧配置です。九鬼山でも山頂付近やその手前の南側が開けた場所で風がやや強まるときがありました。さて、本題に戻りましょう。風は、高気圧の周辺では時計回りに吹きます。そしてほぼ等圧線に平行に吹きます(実際にはやや気圧が低い方に横切るように吹く)。このように、等圧線の向きから風の向きを知ることができます。今回は高気圧の西側に入るため、富士山周辺では南から南西風が吹きました。

図3 850hPa面(上空約1,500m)の気温と風予想図(山の天気予報「専門天気図」より i.yamatenki.co.jp/)

また、気象庁のホームページなどで見られる天気図で分かりにくいときは、850hPa面の風向を参考にすると良いでしょう。風向の見方は、下記を参考にしてください。棒から羽根のようなものが出ていますが、その羽根に向かって風が吹きます(図4)。

図4 風の向きと風の強さの見方

このように、事前に天気図から風向きを読み取り、地図から湿った空気が入りやすい場所を予想することで、天気の崩れが小さい山を選ぶことができます。

ぜひ、皆さんもチャレンジしてみてください。

ヤマテンでは、山で雲の見方を学ぶ「山頂で観天望気」を不定期で実施しています。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

山の天気予報のご案内

ヤマテンでは、「山の天気予報」というサイトで、全国330山の山頂予報を配信しているほか、主要な18山域では、具体的な気象リスクについての警戒事項、詳細な解説付の予報を発表しています。また、首都圏や関西近郊の低山など無料でご利用いただける山を設定しているほか、大荒れ情報や「今週末のおすすめ山域(毎週木曜日発表)」、各種予想天気図、ライブカメラ、ヤマレコの最新記録、通信環境が制限される登山中にストレスなく使用できる登山モードを設定するなど、登山者視点の気象情報を提供しています。ヤマレコアプリでも山の天気予報の一部機能を確認できるようになりました。詳しくは、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000012267.html にてご確認ください。

さらにGWや海の日、お盆、年末年始など連休期間の前には、スペシャル予報対象の山で5日間予報または週間予報を発表します。次回は、5月の大型連休の週間予報を発表する予定です。皆様の登山計画を立てる際や、安全登山にぜひ、お役立てください。ご登録方法やサービスの詳細につきましては https://lp.yamatenki.co.jp/ でご確認ください。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。

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