雲から山の天気を学ぼう|(84)台風が来る前は絶好の空見(そらみ)日和!?

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これから9月にかけて、日本列島は台風シーズンを迎えます。さて、皆さんは台風が接近することが予想されているとき、どのように登山計画を変更しますか?
気象庁から台風の進路予想図が発表されると、早々に登山を中止してしまう方が多いのではないでしょうか?実は、台風が接近する前は、美しい朝焼けや夕焼けが見られたり、滝雲など珍しい雲が見られたりすることが多く、一年に何度もない、感動的な空色を楽しむことができる可能性があるのです。
今回は、そんな台風が接近してくるときに見られた雲について紹介します。

ある夏の日、小笠原諸島の南海上を北上しているときに見られた雲です(写真1)。

写真1 台風接近前、空一面に広がるうろこ雲

秋の空の代名詞とも言える、うろこ雲。このときは、台風が南海上にあること、ジェット気流によって空気の状態が乱れていたことにより、見事なうろこ雲が見られました。

写真2 台風接近前日に見られた真っ赤な夕焼けと波状雲(はじょううん)

上の写真は、燕岳山頂で見られた波を打つような雲(波状雲)と夕焼けです。翌日は、台風の接近により天気が崩れていくことが予想されたので、多少時間が遅かったのですが、燕岳往復をこの日におこなうことにしました。空は台風の接近を物語るように、おぼろ雲と呼ばれる灰色の雲や、ひつじ雲と呼ばれる羊の塊のような雲が広がっています。これらの雲が波打つように空に陰影を作っていました。
これらの雲を波状雲(はじょううん)と呼びます。池に石を落とすと水面に波紋が広がっていくように、南海上にある台風が空気に波を起こし、台風から伝わる波が燕岳上空まで伝わってきたのでしょう。
燕岳の山頂で振り返ると、空が黄金色に輝いていて波状雲が放射状に延びています。写真では伝わりにくいですが、見たこともないような、美しい夕焼けでした。その場にいる誰もが言葉を発せず、涙を流している方もいらっしゃいました。

このように、台風の前は色々な雲が見られることが多いのです。大気の状態が乱れているので変化に富んだ雲が見られやすく、上空高い所まで水蒸気が運ばれるため、朝焼けや夕焼けが美しく染まることが多いからです。台風の直撃を受ける日に登山することは無謀ですが、台風の強風域に入る前には、必ず安全な場所まで下山することを守れば、素晴らしい景色に出会えるチャンスがあります。

また、台風が関東地方の沿岸をかすめて通過するとき、ニュースでは台風接近が大きく報じられて影響の少ない山でも登山を中止する人が多くなります。そのようなとき、北アルプスでは台風の進行方向左側に入るため、大型の台風でなければ、天候が崩れる時間は短く、素晴らしい絶景に出会えることもあります。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

山の天気予報のご案内

ヤマテンでは、「山の天気予報」というサイトで、全国330山の山頂予報を配信しているほか、主要な18山域では、具体的な気象リスクについての警戒事項、詳細な解説付の予報を発表しています。また、首都圏や関西近郊の低山など無料でご利用いただける山を設定しているほか、大荒れ情報や「今週末のおすすめ山域(毎週木曜日発表)」、各種予想天気図、ライブカメラ、ヤマレコの最新記録、通信環境が制限される登山中にストレスなく使用できる登山モードを設定するなど、登山者視点の気象情報を提供しています。ヤマレコアプリでも山の天気予報の一部機能を確認できるようになりました。詳しくは、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000012267.html にてご確認ください。

さらにGWや海の日、お盆、年末年始など連休期間の前には、スペシャル予報対象の山で5日間予報または週間予報を発表します。次回は、9月13日(水)にシルバーウィークの週間予報を発表する予定です。皆様の登山計画を立てる際や、安全登山にぜひ、お役立てください。ご登録方法やサービスの詳細につきましては https://lp.yamatenki.co.jp/ でご確認ください。

山の天気を実地(山)で学ぶツアーのご案内

観天望気講座を書いている猪熊隆之や、ヤマテンの気象予報士が講師を務める「空見(雲見)ハイキング」を旅行会社などで実施しています。山は雲を観察したり、学んだりする最高のフィールドです。それは、平地から雲を見ると、どうしても下から見上げてしまうので、平面的にしか見えないのに対し、山では、立体的に雲を捉えられるほか、稜線や尾根上では斜面を昇ってくる上昇気流によってできる雲を体感でき、山を挟んだ両側における雲の出き方の違いも観察できます。また、観天望気だけではなく、登山前日の天気図から押さえておくべきポイントや、荒れた天気の日は、気象リスクを減らすために登山者がおこなうべきことを解説し、安全登山の方法について学びます。
空気は目に見えませんが、雲は空気の状態を語ってくれています。雲の聞えない声に耳を傾けながら、楽しく山を登りましょう。皆様とご一緒できることを楽しみにしています。

毎日新聞旅行雲見ハイキング

大野山と洒水の滝 雲見トレッキング 日帰り
日程:2023年11月19日(日)
企画・実施:毎日企画サービス(毎日新聞旅行)
集合場所:東京駅
ツアーの詳細や申し込み方法は下記URLにてご確認ください。
https://www.maitabi.jp/parts/detail.php?t_type=&course_no=22677

冬の霧ガ峰 ヒュッテみさやま泊  雲見トレッキング 2日間
日程:2024年1月20日(土)~21日(日)
企画・実施:毎日企画サービス(毎日新聞旅行)
集合場所:茅野駅
ツアーの詳細や申し込み方法は下記URLにてご確認ください。
https://www.maitabi.jp/parts/detail.php?t_type=&course_no=22681

皆様と一緒に山を歩き、空見(そらみ)ができることを楽しみにしています。

ヤマテン動画講座(無料)配信中

新型コロナウィルス感染症予防のため、ヤマテンの「山の天気予報」サイトで見られる天気図の見方を動画配信しています。下記URLにてご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=VJ-MWg70LFI&list=PLMEQ1UAZdr6UQfU8W-lzlWUMc1Ajszs70

「空の百名山」を朝日新聞・長野県版などで連載中

過去の記事を下記、URLからご覧いただけます。
http://sora100.net/

ヤマテンオリジナル「観天望気」Tシャツにピンク、グレーが加わりました!

やまどうぐレンタル屋さんが運営するヤマトリップショップで、ヤマテンオリジナルグッズを販売しております。これまでは講習会や空見登山ツアーのみでの販売でしたが、オンラインでもご購入いただけることになりました!また、茅野市内の一部カフェや、やまどうぐレンタル屋新宿店でも販売します。このたび、観天望気Tシャツにピンクとグレーが加わり、カラーバリエーションが増えました!

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https://yamatrip.com/shop/item/list/yamaten?fbclid=IwAR0nbpBkzRh7HMpgJp2ANv1umBDika4ZLufgEjORlMBkNaX2_nbfIYifaQY

ヤマテン オリジナル手ぬぐい

雲を学べる絵葉書セット

新刊のご紹介

猪熊隆之の新著「天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた」が7月20日、ベレ出版より発売!

天気を予測できることわざ、知っていますか? 例えば「アマガエルが鳴くと雨」「ツバメが低く飛ぶと雨」「朝焼けは雨」「夕焼けは晴れ」「暑さ寒さも彼岸まで」「雷三日」などなど……。日本には、昔から言い伝えられてきた、天気に関することわざがたくさんあります。

「これらのことわざの根拠とは?」「本当に天気を予測することができるの?」といった疑問に、山岳気象予報士のパイオニアである著者が答えます!

よく耳にすることわざから、地域特有のもの、山や海で役立つもの、著者の経験から編み出したことわざまで、さまざまなことわざ・言い伝えを解説します! 気象に興味のある方、天気を自分で予測したい人、アウトドアが好きな方など必読の一冊です。

猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。

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