雲から山の天気を学ぼう|(83)ブロッケン現象

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登山中に出会ってみたい現象のひとつ、ブロッケン現象。霧に中に妖怪のような人影が映り、影の周りに虹色の輪ができる現象です。ドイツのブロッケン山で良く見られたことからこう呼ばれています。ヨーロッパでは、「ブロッケンの妖怪」と恐れられてきましたが、日本では、昔から「御来迎」と呼ばれ、後光を背負った阿弥陀如来の出現と考えられ、ありがたがられてきました。ブロッケンは、太陽の光が雲や霧の粒を回り込み、沢山の雲粒で回り込んだ光が重なり合うことで光の縞模様ができる現象です(山の観天望気「山と溪谷社」より)。

写真1 飛行機から見下ろしたブロッケン現象。飛行機の影が投影している

雲や霧が自分より低い場所にあり、太陽が後ろから射すときにしか見られません。したがって、飛行機や山の上でしか出会えない現象です。まさに登山者冥利につきますね。山を歩いているとき、稜線を境にして片方が霧で、片側が晴れていてそちらに太陽があるときはチャンスです。カメラを用意しておきましょう。

ブロッケン現象を狙うには次の3つのポイントを押さえましょう。

  1. 地形的に見られやすい山を選ぶ
    細い稜線や、片側が切り立った崖になっている場所で良く見られます。そのような場所は山では結構ありますので、ブロッケン現象を狙うときは、地形的に見られやすい山を選ぶといいでしょう。
  2. 稜線を挟んでどちら側に雲が出やすいのかを気圧配置から予想する
    ブロッケン現象は、稜線を挟んで片側に霧、片側に太陽が出ていないと見られません。したがって、稜線のどちら側に霧が出そうなのかを考えないといけません。これが結構難しいのですが、低気圧や前線など稜線の両側で雲に覆われてしまうときは見られませんので、そのようなときは避けましょう。標高2,500m以上の高い山では、夏場の太平洋高気圧に覆われた日がチャンスです。その際、盆地や平地に接している側など水蒸気が多い側で霧が発生しやすくなります。常念山脈や後立山連峰では安曇野側、白馬側で水蒸気が多くなります。
    日中、谷風による上昇気流が発生すると、次第に雲が湧き立っていき、稜線の東側で霧が発生します。一方、槍ヶ岳~穂高連峰では飛騨(岐阜県、西)側で水蒸気が多く、日中谷風が強まっていくと、飛騨側から霧が発生します(図1参照)。ただし、いずれの場合も水蒸気が多すぎると、稜線全体を霧が覆ってしまうことがあります。
    図1 北アルプスの水蒸気が多い側と少ない側

    また、谷川連峰など分水嶺の山では、日本海から湿った空気が入るときに新潟県側で、太平洋から湿った空気が入るときは群馬県側で霧が出やすくなります。どちらで出るかは風向きによります。新潟県側から風が吹くときは新潟県側で、群馬県側からの風が吹くときは群馬側で雲が発生しますので、天気図から風向をチェックしていきましょう。天気図から風向を判断する方法は、youtubeのヤマテンチャンネルでご確認ください。
    ヤマテンチャンネル
    https://www.youtube.com/playlist?list=PLMEQ1UAZdr6UQfU8W-lzlWUMc1Ajszs70
  3. ブロッケン現象が見られる時間帯を狙う
    稜線のどちら側で雲が発生するのかを予想したら、次はどの時間帯を狙うかを確認しましょう。夏場の常念山脈や後立山連峰では安曇野側、白馬側で霧が発生しますから、太陽が西側に来る午後がチャンスです。稜線の向きが北西から南東に向いているところでは、午後の早い時間、北東から南西に向いているところでは、夕方近くになったときがチャンスですが、太陽高度が低すぎるとブロッケン現象は見られません。槍ヶ岳~穂高連峰では西側で霧が発生するので、午前中の方がおすすめです。午前中の早い時間は谷風があまり強くなく、上昇気流が弱いことから水蒸気はまだ標高の低い所に溜まっているので、高気圧に覆われているときは、稜線まで雲があがってくることはありません。したがって、午前中遅い時間の方がチャンスです。
    写真2 小蓮華山で見られたブロッケン現象

    信越国境の小蓮華山や谷川連峰の谷川岳トマの耳~平標山では東西に稜線が延びているので、昼間に見られることが多くなります。いずれも新潟県側に雲が広がっているときがチャンスです。予想天気図で風向きをチェックし、低気圧が東に抜けて等圧線の間隔が広がってきたときなど、新潟県側から弱い風が吹いているときを狙いましょう。等圧線の間隔が狭いと、風が強いため、稜線を越えて群馬県側まで雲に覆われてしまうことや、稜線上では風雨(雪)が強まる荒れた天気となるため、避けた方が良いでしょう。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

山の天気予報のご案内

ヤマテンでは、「山の天気予報」というサイトで、全国330山の山頂予報を配信しているほか、主要な18山域では、具体的な気象リスクについての警戒事項、詳細な解説付の予報を発表しています。また、首都圏や関西近郊の低山など無料でご利用いただける山を設定しているほか、大荒れ情報や「今週末のおすすめ山域(毎週木曜日発表)」、各種予想天気図、ライブカメラ、ヤマレコの最新記録、通信環境が制限される登山中にストレスなく使用できる登山モードを設定するなど、登山者視点の気象情報を提供しています。ヤマレコアプリでも山の天気予報の一部機能を確認できるようになりました。詳しくは、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000012267.html にてご確認ください。

さらにGWや海の日、お盆、年末年始など連休期間の前には、スペシャル予報対象の山で5日間予報または週間予報を発表します。次回は、7月11日(火)に海の日連休の週間予報を発表する予定です。皆様の登山計画を立てる際や、安全登山にぜひ、お役立てください。ご登録方法やサービスの詳細につきましては https://lp.yamatenki.co.jp/ でご確認ください。

山の天気を実地(山)で学ぶツアーのご案内

観天望気講座を書いている猪熊隆之や、ヤマテンの気象予報士が講師を務める「空見(雲見)ハイキング」を旅行会社などで実施しています。山は雲を観察したり、学んだりする最高のフィールドです。それは、平地から雲を見ると、どうしても下から見上げてしまうので、平面的にしか見えないのに対し、山では、立体的に雲を捉えられるほか、稜線や尾根上では斜面を昇ってくる上昇気流によってできる雲を体感でき、山を挟んだ両側における雲の出き方の違いも観察できます。また、観天望気だけではなく、登山前日の天気図から押さえておくべきポイントや、荒れた天気の日は、気象リスクを減らすために登山者がおこなうべきことを解説し、安全登山の方法について学びます。
空気は目に見えませんが、雲は空気の状態を語ってくれています。雲の聞えない声に耳を傾けながら、楽しく山を登りましょう。皆様とご一緒できることを楽しみにしています。

アルパインツアー空見ハイキング

夏の白馬で空見&フォトハイク 花の白馬大池ゆったり滞在 3日間
日程:2023年7月20日(木)~22日(土)
企画・実施:株式会社アルパインツアーサービス
集合場所:栂池高原ゴンドラ乗り場 / 10:10(長野駅 改札前 / 8:00)
ツアーの詳細や申し込み方法は下記URLにてご確認ください。
http://www.alpine-tour.com/tourinfo/details.php?keyno=3912

毎日新聞旅行雲見ハイキング

大野山と洒水の滝 雲見トレッキング 日帰り
日程:2023年11月19日(日)
企画・実施:毎日企画サービス(毎日新聞旅行)
集合場所:東京駅
ツアーの詳細や申し込み方法は下記URLにてご確認ください。
https://www.maitabi.jp/parts/detail.php?t_type=&course_no=22677

冬の霧ガ峰 ヒュッテみさやま泊  雲見トレッキング 2日間
日程:2024年1月20日(土)~21日(日)
企画・実施:毎日企画サービス(毎日新聞旅行)
集合場所:茅野駅
ツアーの詳細や申し込み方法は下記URLにてご確認ください。
https://www.maitabi.jp/parts/detail.php?t_type=&course_no=22681

皆様と一緒に山を歩き、空見(そらみ)ができることを楽しみにしています。

ヤマテン動画講座(無料)配信中

新型コロナウィルス感染症予防のため、ヤマテンの「山の天気予報」サイトで見られる天気図の見方を動画配信しています。下記URLにてご視聴いただけます。
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「空の百名山」を朝日新聞・長野県版などで連載中

過去の記事を下記、URLからご覧いただけます。
http://sora100.net/

ヤマテンオリジナル「観天望気」Tシャツにピンク、グレーが加わりました!

やまどうぐレンタル屋さんが運営するヤマトリップショップで、ヤマテンオリジナルグッズを販売しております。これまでは講習会や空見登山ツアーのみでの販売でしたが、オンラインでもご購入いただけることになりました!また、茅野市内の一部カフェや、やまどうぐレンタル屋新宿店でも販売します。このたび、観天望気Tシャツにピンクとグレーが加わり、カラーバリエーションが増えました!

ヤマトリップショップはこちら
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ヤマテン オリジナル手ぬぐい

雲を学べる絵葉書セット

猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。

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