雲から山の天気を学ぼう|(76)天候を急変させる危険な雲~日本海側の山岳編~
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気象遭難は、日本海側の山で多く発生しています。その理由のひとつは、日本海側の山では天候が非常に変わりやすく、朝のうちは晴れていても、昼頃から風雨が強まったり、吹雪になったりすることがあるからです。そのようなとき、山麓の予報では悪天が予想されていなかったり、天気の崩れが小さい予報になることがあります。また、天気の崩れが予想より早くなることもあります。そこで、空を眺めることで、悪天の兆候をいち早く捉え、早めの避難行動につなげるための方法をお伝えします。
写真1 吹雪の中は、視界が非常に悪く、道迷いや低体温症のリスクが高まる
日本海側の山で、天候が急変するのは、日本海の方角に危険な雲が現れるときです。
このうち、もっとも多いのは寒冷前線が接近するケースです。前線にはいくつか種類がありますが、落雷や強雨(雪)、降雹など激しい気象現象をもたらすのは寒冷前線です。そこで、寒冷前線が接近するときの雲を覚えましょう。主に2つのパターンがあります。
1.真っ暗な雲が接近するとき
寒冷前線に伴う雲の特徴は、①真っ暗な感じの雲が帯状に連なっている(赤い破線)、②その雲の下に霞んだような、レースのようなエリアがある、③①の雲の上には、真っ白なソフトクリームのような、もくもくとした雲が見える(①の雲に隠れて見えないこともある) の3点です。
雲は厚いほど、また雲粒が密集している程、暗く見えます。雲が薄ければ、危険な雲ではありませんが、厚みがある雲は落雷や強雨をもたらす積乱雲(せきらんうん、別名雷雲)です。厚みがあるかどうかは、雲の隙間に③が見られるかどうかでチェックします。写真2のように、③が見られるときは厚みがある雲で、寒冷前線に伴う雲の可能性が高くなります。
また、②の部分は、雨が降っているエリアになり(降水雲と呼びます)、このエリアが近づいてくると、雨が降り出します。
2.帯状にモクモクとした雲が連なっている
日本海の方角に帯状のモクモクとした雲が連なっていることが良くあります(写真4の赤い破線)。この雲が左の方から右の方へと進んでいるときは問題ありませんが、奥から手前に進んでくるときは要注意です。
写真5 写真4の数十分後、雲が接近した様子
1のパターンや、2のパターンのような特徴を持った雲が日本海から接近するときは、すぐに落雷や強雨から身を守れる場所に避難することが大切です。
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。
文責:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。