雲から山の天気を学ぼう|(113)風向きによる天気の違い ~冬型編~
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天気予報を見るときに、天気は見るけれど、風の強さや風向きについては確認していない方も多いのではないでしょうか。実は、山の天気では風の強さや風向きがとても重要です。風の強さは、低体温症や突風による転滑落などのリスクにつながりますし、風向きは天気の変化に影響します。今回は、その風向きと天気の関係について、韓国岳での空見ハイキング(※)で見られた雲を元に解説していきます。
※空見ハイキングとは、旅行会社でおこなっている、山の天気を学びながら登山を楽しむツアーです。空や雲の見方、風を読む方法などを学ぶことができます。
空見ハイキング(山の天気ハイキング)の情報は下記ページでご確認ください。
https://www.yamaten.net/workshop
写真1 午前中は快晴の韓国岳

写真2 午後になると、層積雲(そうせきうん、別名うね雲)が広がる

この日は、朝から韓国岳上空は晴れ渡り、霧氷に彩られた山の風景に見とれながら歩いていました。森林限界を超えると空が開けましたが、写真1のように遠くに(写真の奥の方)暗い雲の帯が見えるものの、他の所に雲はなく青空が広がっています。一方、午後になると写真2のように扁平型の塊状の雲が広がっていました。この雲は層積雲といい、北西の季節風が東シナ海を渡る間に、暖かい海面に触れて温められた海上の空気と、上空1,500~2,000m付近に流れ込んだ大陸からの冷たい空気によって、地上付近と高度約2km付近との狭い範囲で温度差が大きくなるときにできる雲です。東シナ海で生まれたこれらの雲は、上空を吹いている風によって流されていきます。
この日は、上空の風が午前中は北~北北西風、午後は北西~西北西風に変わりました。北北西風の場合、図1のように東シナ海からの雲は薩摩半島に入り、霧島連山や大隅半島にはかかりません。写真1の遠くに見える雲は、東シナ海から薩摩半島方面に広がる雲です。
図1 北北西風

図2 北西風から西北西風になると、霧島連山にも雲がかかるようになる

午後になると、風向が北西風~西北西風に変わり、東シナ海からの雲が霧島連山に向かうようになりました。それでは風向はどこで調べれば良いのでしょうか?気象庁などが発表する天気予報でも風向は発表されますが、地上の風向ですので地形の影響で上空の風向とはズレてしまうことがあります。そこでおすすめするのが上空1,500m付近の850hPa面の天気図です。
図3と図4は上空1,500m付近の風と気温の予想図です。風向は、予想図に描かれている棒に羽根のようなものがついている記号で判断します。図5のように、羽根が出ている方角から風が吹いてくると判断してください。
図3 9日午前6時の上空1,500m付近の気温と風予想図

図4 9日午後3時の上空1,500m付近の気温と風予想図

図5 風向きの調べ方

図3を見ると、朝6時の予想で九州南部では北から北北西風になっています。一方、図4の午後3時では北西から西北西風になっています。ちょっとした風向きの変化でこのように雲が流れ込む場所が変わり、天気が変わってきます。風向きや風の強さの変化は天気の変化につながります。時々、風の強さや向きをチェックしてみると天気の変化を早めに察知できるかもしれません。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。
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猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。2023年には、気象予報士として初の8,000m峰(マナスル8,163m)登頂を果たし、2024年、世界最高峰のエベレスト(8,848m)登頂を果たす。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。日本テレビ「世界の果てまでイッテQ」の登山隊やNHK「グレートサミッツ」「地球トラベラー」、東宝「春を背負って」など国内外の撮影をサポートしているほか、山岳交通機関、スキー場、旅行会社、山小屋などに配信し、信頼を得ている。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)、天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた(ベレ出版)。














