雲から山の天気を学ぼう|(109)山岳波(さんがくは)による雲
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今回は、八ヶ岳上空に現れたレンズ雲についてです。しかも三重のレンズ雲です。レンズ雲は、風が山を越える際に生まれる上昇気流が上空や山の風下側に伝わって発生する雲で、山によって発生する空気の波を山岳波と呼びます。レンズ雲の他に吊るし雲や笠雲が山岳波によって発生する雲です。山岳波はある程度、風が強くないと発生しないことから、これらの雲が出たときは、山の上では強風となる恐れがあります。
さて、レンズ雲はひとつしか現れないこともありますが、全天に数が増えていくときや、写真のように二重、三重になっていくときは風がますます強まっていき、高い山では天気も悪化することが多くなりますので、覚えておきましょう。
ちなみに、今回の三重の雲、一番下はよく見られる形のレンズ雲(八ヶ岳の山脈に沿って波が発生しているため、長めのレンズ雲)ですが、その上の雲は面白い形をしています。雲の端がギザギザしていますが、これは雲が下降しながら蒸発している様子を表しています。雲の形がそれぞれ違うのは、雲が浮かんでいる高さが違うためです。レンズ雲は高さによってさまざまな雲の種類からできています。今回の写真のレンズ雲では、一番下の雲と真ん中は高積雲(こうせきうん)によるレンズ雲、一番上は巻層雲(けんそううん)によるレンズ雲になります。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。2023年には、気象予報士として初の8,000m峰(マナスル8,163m)登頂を果たし、2024年、世界最高峰のエベレスト(8,848m)登頂を果たす。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。日本テレビ「世界の果てまでイッテQ」の登山隊やNHK「グレートサミッツ」「地球トラベラー」、東宝「春を背負って」など国内外の撮影をサポートしているほか、山岳交通機関、スキー場、旅行会社、山小屋などに配信し、信頼を得ている。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。