雲から山の天気を学ぼう|(107)雲の高さを知る方法

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空を見上げたときに、雲が浮かんでいると、「あの雲はどの位の高さなのかな?」と思うことがあります。また、雲がやる気を出して雲のてっぺんの高さが夏場だと7,000m以上、
冬場で3,000m以上に達すると雷を伴って激しい雨(雪)をもたらす、危険な積乱雲(せきらんうん 別名雷雲)になっていきます。雲の高さを読むことは、気象リスク回避のうえでも大切なのですが、その高さを特定することは難しいですよね。

そんなとき、山の高さを基準にするとうまくいくことがあります。
写真1は、ある朝、散歩をしているときに見られた雲です。頭上は厚い灰色の雲に覆われていますが、雨は降っていません。この雲は、層積雲(そうせきうん、別名うね雲)と言って、地上から2km位までの間に浮かぶ低い雲で、雲に厚みがないので、雨は降ってもぱらつく程度で済みます。

写真1 蓼科山の中腹に広がる層積雲

そこで、この雲の高さが気になりました。そのときに参考にしたのが、蓼科山の手前側に浮かぶ雲頂(雲のてっぺん)が平らな雲です。雲の高さは、空気の状態が同じ場所ではほぼ同じになります。従って、距離的に近いこの雲(雲のてっぺんが平らな雲)と頭上の暗い雲とは高さがほぼ同じだと考えられます。

写真2 写真1と同じものに猪熊が加筆

この雲のてっぺん(赤い破線)は、白い丸印の山より少し上にあります。従って、この山の高さが分かれば雲の高さが分かる訳です。この山は八子ヶ峰から東に延びる尾根で標高は約1,830mです。そこで、この雲は1,900m位の高さということが分かります。それで、頭上の暗い雲のてっぺんも1,900m位の高さになります。
これから夏山シーズンで山にかかる雲を目にする機会が増えると思います。ぜひ、近くの目印になる山などから、目の前や頭上に浮かぶ雲の高さを測ってみてはいかがでしょうか。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。2023年には、気象予報士として初の8,000m峰(マナスル8,163m)登頂を果たし、2024年、世界最高峰のエベレスト(8,848m)登頂を果たす。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。日本テレビ「世界の果てまでイッテQ」の登山隊やNHK「グレートサミッツ」「地球トラベラー」、東宝「春を背負って」など国内外の撮影をサポートしているほか、山岳交通機関、スキー場、旅行会社、山小屋などに配信し、信頼を得ている。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。

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