雲から山の天気を学ぼう|(106)霧に包まれた理由(わけ)
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今回は霧のお話です。
この日は雨が上がり、雨を降らせた暗い雲は南東(写真1右側)へ抜けていき、北西(写真左側)から青空が広がってきました。そして、それと同時に下の方から霧が上がってきました(写真2)。
写真1
写真2 霧があがってくる(カメラ①のアングル)
そしてこの雲は、写真の右側(南東)から左側(北西)に流れていきました(写真3)。
写真3 雲の流れ
一方、反対側の谷沿いにも霧が流れてきました(写真④)
写真4 写真3と反対側(西側)の霧の流れ(カメラの方向②)
これらの霧に囲まれた撮影ポイントですが、ここだけは霧に覆われませんでした。この場所では、このような現象が時々あります。
それでは、この霧はどうして生まれ、どうして撮影ポイントは霧に覆われなかったのでしょうか?
ひとつ目の要因は夜半に激しい雨が降ったこと。雨が地面に沁み込んで、土の中の水分が蒸発していき、空気中に水蒸気が溜まっていました。そこに諏訪湖の水蒸気が上川に沿って流れ込み、さらに宮川からの水蒸気が南側から入って茅野駅の近くで合流したため、空気はこれ以上水蒸気を含めなくなって霧が発生。それが上川に沿って昇っていきました(図1の水色の矢印)。それが2つに川が分かれるところで、霧の進路も左右に分かれていきました。写真2、3が東側の川沿いに、写真4が西側の川沿いに流れた霧です。
撮影ポイントは2つの川の間の高台にあるため、霧はそこを避けるように進み、撮影ポイントでは霧に覆われなかったという訳です。
図1 霧の動きと撮影位置とカメラのアングル
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンhttps://www.yamaten.net/の代表取締役。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。「山の日」アンバサダー。中央大学山岳部前監督。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。近年は、山岳気象を学ぶために、予報依頼の多い山に登っており、2019年にはキリマンジャロ(タンザニア)、チンボラッソ(エクアドル)、コトパクシ(エクアドル)登頂。2022年はマッターホルン(スイス・イタリア)登頂。2023年には、気象予報士として初の8,000m峰(マナスル8,163m)登頂を果たし、2024年、世界最高峰のエベレスト(8,848m)登頂を果たす。また、多くの登山者に雲を見る楽しさを伝えるための「山頂で観天望気」企画を実施。日本テレビ「世界の果てまでイッテQ」の登山隊やNHK「グレートサミッツ」「地球トラベラー」、東宝「春を背負って」など国内外の撮影をサポートしているほか、山岳交通機関、スキー場、旅行会社、山小屋などに配信し、信頼を得ている。
「マツコの知らない世界」、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「地球トラベラー厳冬 遥かなる利尻山」「にっぽん百名山」「石丸謙二郎の山カフェ」などテレビ、ラジオ出演多数。著書に、山岳気象大全(山と溪谷社)、山の観天望気(山と溪谷社)、山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)、山歩き超入門(エクシア出版)、登山の科学(洋泉社)。