雲から山の天気を学ぼう|(29)~機窓からの観天望気 石垣島編 partⅡ~
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~機窓からの観天望気 石垣島編 partⅡ~
前回に続き、機窓から見ることができた雲の解説です。前回は羽田空港から富士山上空まででしたので、今回はその続きを。
飛行機から知多半島の形が見えます。中央には中部国際空港も。知多半島付近と写真右端に積雲の列が連なっています。これは、知多半島の丘陵地帯で上昇させられた空気が丘を越えて下降した波が上空に伝わってできた山岳波(さんがくは)の一種です。
その波が上昇した所で雲ができています(写真1の赤色の矢印)。また、緑色のカコミ部分で小さな雲が点在していますが、これは好天積雲(こうてんせきうん)で、地上付近で気温が上昇し、上空との温度差が大きくなったときにできる雲で(さらに雲ができるのに必要な水蒸気量も必要)、地面付近の温められた空気が上昇したところで雲ができ、上空の冷たい空気が下降したところで雲が消えています。
次に見えてきたのは鈴鹿山脈の山麓で発生した雄大積雲(ゆうだいせきうん)。雄大積雲とは積雲(せきうん)がやる気を出して成長すしたものです。
それではなぜ、ここで雲がやる気を出したのでしょう。雲がやる気を出すには雲が自分で成長できる高度まで上昇しなければなりません。そのキッカケは3つあります。ひとつは、鈴鹿山脈という山、もう一つはその山に向かう海風、谷風。最後に鈴鹿山脈の山麓で温められた空気です。
写真を見ると、雄大積雲が発達した場所のすぐ海側には盆地のような地形があり、そこで地面付近の空気が温められ、その温まった空気が海風や谷風で山に運ばれて上昇したことが分かります。さらに、海と内陸との気温差から夏の晴れた日中は海からの風(海風)が吹きます。これが海上の水蒸気を山の方へ運び、雲の栄養源となりました。そして、上空を吹いている南西風と海風がちょうど雲が発達した辺りでぶつかって上昇流を強めたことなどが、この雄大積雲を発生させたキッカケと思われます。
さらに、この雄大積雲が落雷や強雨をもたらす積乱雲(せきらんうん)にまで成長するかどうかは、観天望気講座10回「やる気のある雲、ない雲」をご参照ください。また、雲ができるキッカケについても、観天望気講座21、23回に掲載されています。
今回はここまでにしましょう。雲を見ていると、なかなか飛行機の旅は進みませんね(笑)。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。