雲から山の天気を学ぼう|(13)立山連峰・大日岳で出会った雲

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立山連峰・大日岳で出会った雲

今回は、今年3月に実施されました国立登山研修所の大学生登山リーダー冬山研修会で立山連峰の大日岳に行っていたときに、見られた興味深い雲についてご紹介します。
この日の朝6時の天気図です。

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東日本に中心を持つ高気圧に立山連峰(大日岳)は覆われています。このため、下の写真のように朝は良く晴れていました。

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ただ、青空の中にスジのような雲があります(写真の中央やや左)。これは巻雲と呼ばれる雲で、氷の結晶でできている、雲の中でもっとも高い所にある雲です。天気が崩れるときに、まず最初に現れる雲でもあります。また、写真の奥の方には帯のような白い雲が見えています。これは巻層雲(薄雲)と呼ばれる雲です。画面奥は南西方向です。このように、巻雲が現れた後、西の空から薄雲が広がっていくときは天気が崩れることが多く、その後の雲の変化に注意しましょう。

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薄雲は徐々に全天を覆っていき、上の写真のように、太陽の周りに虹色の暈ができました。これを日暈(ひがさ、にちうん、ハロ)と呼びます。薄雲も巻雲と同じように六角形の氷の結晶でできています。太陽の光が六角形の氷晶を通り抜けるとき、氷晶がさまざまな面を向いていると、このような暈ができます。暈ができるということは、薄雲が広がっている証拠で、天気が下り坂に向かうことが多いものです。

実際に、このときも次第に雲は厚みを増し、高層雲(おぼろ雲)に変わっていきました。

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このように、一様な灰色の雲を高層雲(おぼろ雲)と呼び、巻層雲が高層雲に変わると数時間後に雨や雪が降り出すことが多くなります。さらに、赤いカコミの部分に見られるように、雲の下に幕が垂れ下がったような模様が見えるときは、まもなく雨や雪が降りだす兆しです。雲粒は非常に小さく、軽いので上昇気流によって支えられ、空に浮かんでいますが、雲粒が成長して重くなると、上昇気流で支えらず、落ちてきます。さらに成長して雨粒や雪片になってもやはり、落ちてきます。成長した雲粒や雨粒、雪片などが落ちてくる間に蒸発すると、このような幕ができるのです。これは雨や雪がいつ降ってもおかしくない状態です。

一方、赤いカコミの左下に見える、雪の山(加賀の白山です)は、雲に覆われておらず、色も明るい感じです。太陽の薄日が当たっているようにも見えます。つまり、雲の向こう側はまた、天気が良くなる感じです。つまり、この曇り空は一時的なもので、これが通り過ぎるとまた、晴れてくるという予想が経ちます。実際、さきほどの天気図で見ても、①の高気圧が通り過ぎた後、②の高気圧が近づいてくることが分かります。つまり、今回の雲の広がりは、①と②の間の弱い気圧の谷が通過したことによるものです。

午後の天気図(下の図)を見ると、①の高気圧は東海上へ抜け、②の高気圧は動きが遅くなっています。その間に弱い谷ができて、雲に覆われたのです。

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もし、①と②の高気圧の間に低気圧が出れば、もっと天気が崩れ、雨や雪が降りだすことでしょう。そのときは、白山などの遠くの西の山は雲に覆われて見えなくなり、さらに西の空に明るいところは見られず、さらに暗い雲で埋め尽くされます。

観天望気と天気図を組み合わせることで、天気の崩れていく兆候や、今後どの位天気が崩れるのかを知ることができます。皆さんのチャレンジしてみてください。

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観天望気講座を書いている猪熊隆之が講師を務める「お天気講座」を旅行会社で実施しています。山は雲を観察したり、学んだりする最高のフィールドです。それは、平地から雲を見ると、どうしても下から見上げてしまうので、平面的にしか見えないのに対し、山では、立体的に雲を捉えられるほか、稜線や尾根上では斜面を昇ってくる上昇気流によってできる雲を体感でき、山を挟んだ両側における雲の出き方の違いも観察できます。また、観天望気だけではなく、登山前日の天気図から押さえておくべきポイントや、荒れた天気の日は、気象リスクを減らすために登山者がおこなうべきことを解説し、安全登山の方法について学びます。
空気は目に見えませんが、雲は空気の状態を語ってくれています。雲の聞えない声に耳を傾けながら、楽しく山を登りましょう。皆様とご一緒できることを楽しみにしています。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

図:気象庁提供

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

猪熊隆之(いのくまたかゆき)

全国18山域、59山の天気予報、大荒れ情報、専門天気図、雨雲レーダー、山のライブカメラ、ヤマレコの最新記録などが見られる「山の天気予報」(https://i.yamatenki.co.jp/)サイトを管理している株式会社ヤマテン(http://yamatenki.co.jp/)の代表。

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