日本の国立公園の山の魅力|白山
*北アルプスの縦走中、稜線に立ち西北西のかなたを眺めると遥かにどっしりした山容が見える。白山である。周辺には大きな山がない独立峰なのでその存在感は圧倒的である。
*今号では、国立公園名の冠になっている「白山」に登ってみたい(ちなみに、国立公園名に単独の山名が冠されているのは他に「大雪山」のみである)。
*白山は岐阜県、石川県、福井県にまたがる雄大な山域である。したがって、登山道も四方から頂上へとつながり、どこからでも登りやすい。
*白山は信仰の山でもある。白山を取り巻くいずれの地からもさえぎられることなく頂上が見え、また、「白山」の名前の通り頂上から中腹にかけて白い雪の衣を着て神々しい。いにしえの人々が合掌して崇めるにふさわしい姿をしている。
*その頂上は禅頂とよばれる。禅の修行の一環として麓から営々として登り頂上を極める。禅頂へつながる登山路は禅定道と名付けられる。加賀から加賀禅定道、越前から白山禅定道、まさしく信仰の道にふさわしい。
*ほかに四方から登山道が頂上を目指す。北から岩間道、時計回りに中宮道、平瀬道、石徹白(いしとろ)道、白山禅定道、釈迦新道、そして白山(越前)禅定道となる。
*白山はまた花の名山である。まずはハクサンコザクラ、ハクサンイチゲ、ハクサンフウロ、ハクサンシャクナゲ、ハクサンボウフウ、ハクサンシャジンなど、「ハクサン」を冠した花々が目を奪う。いずれも日本各地で咲くが、ここ白山の地で初めて植物種として同定された。
*このほかにもチングルマ、ミヤマキンバイ、コイオバカマ、ニッコウキスゲ、タカネナデシコなど枚挙に暇ないほど多種多様な花が、春から秋へ三季につながって咲き誇る。百花繚乱の言葉をまさしく目に見るがごとしである。
*白山中腹には室堂がある。社とともに宿泊施設があり白木づくりの質朴な造りで登山者を迎える。多くの登山者はここに一泊し、翌早朝頂上(御前峰)を目指しご来光を仰ぐ。
*白山の楽しみは登山のみではない。山麓には多くの温泉郷が点在し、それぞれの下山口近くに日帰り温泉が、汗にまみれ疲れ切った体をやさしく温めてくれる。
*いずれの温泉も薬効をうたっており、できれば一泊してゆっくりしたい。
*もし車やレンタカーを利用してここを訪れていれば、登山の後は北陸有数の都市金沢、さらには能登半島へとドライブを楽しみたい。山と海、自然と文化の多彩で彩り豊かな旅が楽しめる。
文:日本山岳救助機構(jRO:ジロー) 若村 勝昭
写真は「環境省ホームページ」より
https://www.env.go.jp/park/parks/index.html