日本の国立公園の山の魅力|白山

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白山(白山国立公園にある山)

山の知識検定(通称「ヤマケン」)をご存じだろうか。山や登山についての知識を深めることで、山岳遭難事故を防止するとともに楽しく山に登ることを目的とする。毎年秋に実施され、今年度で8回目となる。日本百名山や海外の山のほか、地図読みや登山技術、救急法、病気、動・植物、天気、歴史、文学などの問題が多岐にわたって出題される。難易度に応じてブロンズ、シルバー、ゴールドの3コースがある。資格試験ではないが自分の知識の程度を確認できるし山や登山の奥深さを味わえる。
私は第1回目からの受検生で、いまは検定の運営に協力させていただいている。こうした縁があって、今回、国立公園にある山について書く機会をいただいた。
そこで最近登った白山の魅力について、ヤマケン目線から紹介したい。

まずは問題を出そう
次の白山に関する説明として間違っているものを選びなさい
**1 白山という山は存在せず、御前峰、大汝峰、剣ケ峰と周辺の山の総称である。
**2 山名を冠する高山植物は、ハクサンの名前がつくものが一番多い。
**3 白山は活火山で御前峰周辺の池は噴火でできた火口と考えられている。
**4 主峰である御前峰の山頂には白山比咩神社の奥宮と一等三角点がある。
ヤマケンは、こんな風に4択で出題されるのが基本だ。

●白山の由来と白山国立公園
「白山」の名前は、夏まで雪をかぶった姿に由来する。古くは「越の白嶺」ともよばれ、古今和歌集に登場している。白山という山があるわけではなく最高峰の御前峰(2702m)、大汝峰(2684m)、剣ケ峰(2677m)を中心に周辺の山も含めた総称である。こうした複数の峰を総称する呼び方は、立山や大雪山などにもみられる。
白山国立公園はこの三山を中心に南北約40km、東西約30kmに広がり、石川・富山・福井・岐阜の4県にまたがる自然公園法に基づく公園である。
ところで、日本の国立公園は全部でいくつあるだろうか?
正解は34。このうち1つの山名だけで国立公園の名前とするのは白山国立公園と大雪山国立公園しかない。

白山の代表的な登山口は標高約1250ⅿの別当出合。シーズン中は週末を中心にマイカー規制され、6km手前の市ノ瀬からシャトルバスが運行される。あいにく登山日は平日で、しかもドシャブリの雨。別当出合まで車で入れた。
登山センターで登山届(登山計画書)を提出する。石川県は条例で白山での登山届の提出を平成29年から義務化している。登山届はどの山でも義務に関わりなく提出したい。登山口でポストが見つけにくいことがあるので事前に調べておくといい。ヤマケン(以下はブロンズコースの内容である)では登山計画書に関する問題は必ずといっていいほど出題される。


●霊峰の白山と禅定道
登山口には鳥居が立っている。白山は古くから白山比咩大神の神霊が鎮まる霊山として崇められてきた。717年に越前の僧である泰澄が開山したと伝えられる。神仏習合の折、白山(御前峰)の本地仏は十一面観音とされ、観音の山として京の都からも信仰された。やがて白山信仰は全国に広まっていく。明治時代に入ると廃仏運動がおこり白山比咩大神のみが奥宮に祀られて今に至る。ヤマケンでは「三大○○」がしばしば出題されるが、霊峰白山は富士山、立山とともに「日本三霊山、日本三名山」とされる。


別当出合から室堂へ向かうには、砂防新道か観光新道かを選択する。
この日は観光新道から登った。観光新道は最初がやや急登で登りきったところで越前禅定道と合流する。「禅定道」とは山岳信仰の高まりとともに整備された修行のための登山路で、白山比咩神社の加賀馬場を登拝の拠点とした加賀禅定道、平泉寺白山神社の越前馬場からの越前禅定道、長滝白山神社の美濃馬場からの美濃禅定道がある。合流した観光新道は越前禅定道の一部で、ここからは傾斜も緩くなる。途中には仙人窟(岩穴)や殿ケ池避難小屋がある。

●沢山の顔を持つ白山
多雪地帯である白山は花の山としても知られる。「ハクサン」という名を冠する高山植物は18種類もあり、ダントツで多い。ヤマケンでは必ずとっていいほど高山植物の写真と名称を組み合わせる問題が出題される。私が登山をはじめた頃は山頂にいかに立つかに熱心で高山植物には関心がなかったが、ヤマケンを受検しはじめてから、花と葉を写真にとって下山してから調べたりもする。
高山植物にとっての夏は短い。登った8月末はとっくにシーズンは終わっていて、イブキトラノオやハクサントリカブトがわずかに咲いていた。7月~8月上旬であればクロユリの群生を探してほしい。石川県の「郷土の花」で黒百合伝説が残されている。
お花畑を楽しめる場所は、お池めぐりをはじめあちこちにある。

ところで道中に写真のような標柱があった。何のためにあるのだろうか?
白山は活火山である。頂上部にある大小の池は過去の噴火でできた火口と考えられている。大汝山は、はるか昔の火山(古白山火山)の浸食作用を受けていて、御前峰や剣ケ峰は、その後に誕生した新白山火山の影響でできた。
御嶽山での痛ましい自然災害以降、火山に対する意識が高まっている。ヤマケンでは噴火警戒レベルの内容や火山か否かなどについて出題される。
噴火警戒レベル2では、想定火口域から概ね2km圏内は立入規制される。写真の標識はその範囲を示す。

●室堂と山頂
この日は標高2450mの室堂で宿泊。「室堂」とは修験者が宿泊や祈祷をした場所で、現在は地名となっている。室堂を拠点に翠ケ池や大汝山などを周回できる。
携帯で天気図を確認する。停滞前線が張り出されては、山頂一帯はしばらく霧か雲に覆われたままだろう。ヤマケンでは天気に関しても出題される。天気記号や雲の種類、低・高気圧、前線の種類などは頻出事項で、観天望気なども知っておくといいだろう。
結局、翌朝早朝の少雨を狙って御前峰の山頂にたったものの霧の中だ。山頂には一等三角点と奥宮がある。晴れると素敵な景色が眼下に広がる。

●砂防新道と白山砂防
天候は回復の様相をみせないので大汝山の周回はあきらめ、砂防新道経由で下山することにした。
地形図(国土地理院発行の2万5千分の1の地図)で砂防新道をみると、こんな地図記号を見つけられるが、何だかおわかりであろうか。地図記号とその名称の組み合わせ問題はヤマケンの定番だ。
正解は「せき(小)」。実物は写真のとおりで、想像したもの比べるのもまた楽しい。


これらのせきは、「砂防堰堤群」と呼ばれる。堰堤などを設置するいわゆる「砂防」工事は、白山を語るうえで欠かせない。白山を源流とする手取川は、豪雨になると下流で多くの犠牲者を出してきた。いわゆる「別当崩れ」に代表される手取川の氾濫を防ぐため積み重ねてきた砂防工事は「白山砂防」と呼ばれる。今歩いている砂防新道は、砂防工事のための資材運搬に使われた道が元だ。ヤマケンのシルバーコース以上になると出題は更に幅広く深くなる。登山と合わせて、こうしたことも知っておくと山の楽しみが増す。

●魅力あふれる白山
白山は動植物や信仰、歴史など話題が豊富で、山を楽しむ要素がギッシリと詰め込まれている。風雨での登山は実力と相談だが、天気が良ければ初心者が快適に山頂を踏むことができる。
下山後に温泉でひと汗を流すのも楽しみだし、地酒もいいだろう。これらに関する問題が雑学として出題されたこともある。
また国立公園には「ビジターセンター」が設置されていて、登山に関する相談のほか、動植物や地形等について学ぶことができるので寄ってみるのもいい。
日本百名山を著した深田久弥のふるさとの山、白山。ゆっくりと楽しみながら登ってほしい。そして、是非ともヤマケンに挑戦して安全登山を楽しんでいただければ幸いである。

さてさて最初に出した問題であるが、すべて正しい説明である。自信を持って答えられただろうか。実際のヤマケンでは、もちろん4択の中に正解があるから安心してください。
Hooter
<山の知識検定サポーター>

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