救急法|凍傷

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低温の影響により、手足の動脈が縮んで血液の循環が悪くなったり、組織そのものが凍結して細胞が破壊されたりする局所的な障害を凍傷という。

2001年の正月、北アルプス一帯では1週間以上もの悪天候が続き、その間に計21件もの遭難事故が発生したが、結果的に命を助けられた者の多くは 凍傷を負っており、なかには余儀なく手足の切断を強いられた者もいた。また、2006年3月には八ヶ岳の阿弥陀岳を下山中の3人パーティが「凍傷にかかっ て動けない」と救助を要請してきたが、救助のヘリコプターが駆けつけたときにはすでに3人とも力つきていた。

凍傷の障害の程度は、表のように第Ⅰ度、第Ⅱ度、第Ⅲ度の3段階に分けることができるが、実質的には比較的軽症な「表在性凍傷」と、外科処置が必要 となる「深部性凍傷」のふたつに分けられている。表在性凍傷は、病変が表皮どまりか一部真皮にまで及び、これに発赤、浮腫、腫れ、水疱がともなう。皮膚は ウエットな状態で、淡白色、淡赤色、あるいは紫色に変わる。水疱はしだいに乾燥し、表皮は黒褐色になって剥離し、下から新しいピンク色の薄い表皮が顔をの ぞかせる。適切な治療を行なえば、約3週間で治癒する。

もう一方の深部性凍傷は、病変が真皮から皮下組織、骨にまで達成するもの。患部全体が萎縮してしわを形成し、皮膚は黒紫色化または白ろう化する。その後、黒くて硬い乾燥壊死状態(ミイラ化)に進行し、切断手術を要することになる。

凍傷になりやすい体の部位は、手足の指先、耳や鼻、顔面など。とくに雪山では、濡れた手袋や靴下をつけたまま行動したり、肌の露出部が冷たい風に長 時間さらされたりすることによって起こるケースがほとんどである。靴ひもやアイゼンバンドの締めすぎ、靴のサイズが小さいなどの理由で血行障害が起こって いる場合にもかかりやすい。

もし行動中に手足の指や耳たぶなどが痒くなったりじんじんと痛んできたりしたら、それは凍傷の初期症状だと思っていい。指先を動かす、手でこすってマッサージするなどして血行の促進に努めよう。手袋や靴下が濡れていたら、できるだけ早いタイミングで取り替えたい。

痛みが消えて感覚がなくなる、皮膚が真っ白になるなど、症状が第Ⅱ度以上になってしまったときは、コッヘルなどに40度前後のお湯を沸かし、患部全 体を浸して温める。温める時間は40~50分。湯の温度を保ちながら温めること。患部は感覚がなくなっているので、火傷しないように注意する。マッサージ は組織を破壊してしまうので行なってはならない。水疱が生じているときは、絶対に破らないように処置を行なうことだ。

融解させた患部は滅菌ガーゼで覆い、動かさないようにして保温に努め、下山後に病院で治療を受ける。ただし、行動中に凍傷にかかってしまい、下山す るまでにまだ数時間以上行動しなければならない場合には、前記の処置を行なわずに行動を続け、下山してから治療してもらうこと。一度融解した組織は非常に もろく、動かすことによってますます損傷をひどくしてしまうからだ。

凍傷の障害の程度

第Ⅰ度 皮膚が痒くなったり赤く腫れたりする
第Ⅱ度 皮膚の感覚がなくなり、水疱が生じてくる
第Ⅲ度 皮膚が壊死して白くなり、のちにどす黒く変色する
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