救急法|やけど
2003年1月、奥秩父の金峰山に単独で登った男性が、テントの中でコッヘルの湯をこぼしてしまって太ももを火傷。そのまま登山を続けたが、火傷の傷がひどくなって行動不能に陥り、10日間のビバークののちに救助されるという事故があった。
この事例のように、山での火傷の事故は、お湯やスープなどの熱い液体をこぼしてしまう、熱くなったストーブやコッヘルなどに触れてしまうなど、9割 以上が調理をするときに起こっている。また、ストーブの不適切な使用によって燃料が爆発したり、ストーブの火が衣服やシュラフ、テントなどに引火したりす るケースも見られる。
火傷は、受傷部の深さと広さによって重傷度が以下の3段階に分けられていて、体表面の20~30%にわたる広い範囲に火傷を負ったときは治療を急ぐ必要がある。重傷の場合は命を落としてしまうこともある(体表面の比率はイラストを参照)。
1度…皮膚表面が赤くなり、ひりひりとした痛みがある。
2度…真皮層に水疱ができる。
3度…皮下脂肪にまで達し、自然治癒できないので手術が必要となる。
火傷を負ってしまったときは、傷をそれ以上広げないようにすることが重要であり、一刻も早く患部を冷やさなければならない。冷水や雪などで最低5分 以上、痛みがとれるまで冷やし続けよう。衣服の上から火傷をしてしまった場合は、水流を直接患部に当てて冷やすのではなく、衣服の上から冷やすようにす る。慌てて衣服を脱ごうとすると、水疱が破れてしまうことがある。
冷やしたあとは、清潔なガーゼなどを当てて患部を保護し、包帯を巻いておく。火傷を負った皮膚は菌が入りやすくなっているため、患部を清潔 に保つこと。油や薬品類は絶対に塗らないように。また、水疱ができてしまっても、これをつぶしてはならない。火傷の範囲が体表面の10%以上に及ぶ場合 は、すみやかに下山して病院で治療を受けよう。
火傷の重症度と症状
1度 | 2度 | 3度 | |
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火傷の深さ | 表皮 | 真皮(浅い中間層、深い中間層) | 皮下脂肪(全層) |
色・外見 | 赤 | 浅い中間層…赤、水疱ができることも 深い中間層…ピンク、白 |
白、黒、茶色 |
症状 | 正常 | むくみ、厚くなる | 皮革様になる |
血液循環 | あり | 浅い中間層…あり 深い中間層…一部あり |
なし |
治癒期間 | 5~10日。瘢痕なし | 浅い中間層…10~21日。軽い瘢痕 深い中間層…25~60日。厚い瘢痕 |
完全治癒しない |