雲から山の天気を学ぼう|(70)白馬岳から見られた雲

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今回は、先日白馬岳に行ったときに見られた雲について紹介します。

当日は、朝から雲一つない快晴で、登攀日和になることが予想されました。それではTHE・ENDになってしまいますよね(笑)。主稜を登攀しているときは、なかなか雲が現れず、暑さとの闘いでしたが、山頂直下に到達した昼前からは、雲がそれなりに出てきてくれました。

まずは、エントリーNO.1 積雲(わた雲)です。

写真1 日射によって熱せられた地上付近の空気が上昇してできた雲

良く見かける、青空にぽっかりと浮かんでいる雲ですね。綿のように見えることからわた雲とも呼ばれます。雲の中ではもっとも低い所にできるもののひとつで、地面付近が日射などで温められると、それに接している空気も温められ、軽くなった空気は上昇していきます。雲は水蒸気を含んだ空気が上昇して、水蒸気が冷やされることでできるので、上昇気流が起きるところで生まれます。

続きまして、エントリーNO.2 積雲(わた雲)です。

写真2 谷風によって上昇させられてできた雲

「同じじゃん!」と思われるでしょうが、今度は、「谷風」と呼ばれる風が生み出した積雲です。

「山谷風(やまたにかぜ)」という言葉を聞いたことがありますか?暖かい時期の、晴れて風が弱い日に吹く風で、特に夏の日中は、この風によって山の天気は左右されます。この観天望気講座でも何度も出てきましたが、改めて説明していきます。

図1 山谷風の仕組み(山岳気象大全「山と溪谷社」より)

晴れて風が弱い日は、地上と空気との温まりやすさ、冷えやすさの違いによって気圧差が生じ、風が生まれます。夜間から朝のうちにかけては、山の上から里へと吹き降りる山風(やまかぜ)がふき、山全体が下降気流となるため、雲は消えて晴天になります。一方、日中は太陽光線で地面付近が温められるにつれて谷風と呼ばれる、里から山の上へと向かう風が吹きます。特に、昼頃からは谷風が強まっていくので、谷風による上昇気流で雲ができやすくなるのです。夏の日中、山では次第に霧に覆われることが多くなるのは、日本の夏は蒸し暑く、空気中に水蒸気が沢山含まれていることと、谷風によってこの湿った空気が上昇させられるためです。

写真3 谷風によってできた雲partⅡ

この日は空気が乾いていて、空気中の水蒸気量が少なかったので、写真2、3のような雲が時々できても、雲が「やる気」を出すことはなかったのですが、夏場のように水蒸気が多いときは、谷風が強まっていくとともに、雲が「やる気」を出して入道雲(雄大積雲)に成長し、場合によっては、雷雲(積乱雲)に成長することもあります。

さて、エントリーNO.3も積雲(わた雲)です。今度は、積雲がいくつも連なっているパターンです。

写真4 北アルプスの南側に連なる積雲

白馬岳山頂に到達すると、槍ヶ岳や鹿島槍ヶ岳、赤牛岳、立山連峰など南側に連なる北アルプスの山並みが一望できます。南の空を眺めていると、北アルプスの奥の方(南側)に積雲が連なっているのが見えました。

図2 南からの湿った空気が入ってきたときの北アルプスの天気

この日は、午後になると、南から湿った空気が入ってくることが予想されていました。その湿った空気が、北アルプスの南側の低い山や、北アルプス南部の斜面を上昇して雲を作りました。北アルプスに沿って広いエリアで上昇気流が発生したので、積雲が帯状に連なっているのです。それらの雲は、北アルプスで堰き止められて北側には侵入できず、北アルプスの大部分は良いお天気になりました。また、南風が吹くときは、北アルプスでは白馬岳など北部ほど天気が良くなります。

ただし、湿った空気の勢いが強くなると、山を越えて雲が侵入してくることがあります。そうなると、山の北側でも天気は崩れていくので注意しましょう。

それではなぜ、南から湿った空気が入ることが予想できたのでしょうか?それは、天気図を見ることで分かります。この日は、高気圧が日本の東海上に抜け、日本海から寒冷前線がゆっくりと接近してくる形でした。高気圧の周辺では、等圧線に沿うように時計周りに風が吹くので、南西~南風になります。また、高気圧の後面(後ろ側)では水蒸気量が多くなる特徴もあります。こうしたことから、南側から湿った空気が入ってきやすい気圧配置になっていることが分かります。

図3 白馬岳に行った日の地上天気図

さて、いかがでしたでしょうか?今回は3種類の積雲についてご紹介させていただきました。また、次回をお楽しみに!

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

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