日本の国立公園の山の魅力|赤石岳

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日本一広大な「社有地」

南アルプス国立公園は、甲斐駒・鳳凰山系、白峰山系、赤石山系の3つの山系で構成されている。その赤石山系の間ノ岳から畑薙第一ダムにかけての大井川流域、東西10㎞、南北約33㎞、面積244㎢。JR山手線が囲む広さの約4倍の面積が特種東海製紙井川社有林である。これは日本一の社有地といえる。
jROが環境省国立公園オフィシャルパートナーとなったことを記念して始まった連載シリーズ「日本の国立公園の山の魅力」の第15回目は日本一の社有地にそびえる3000m峰赤石岳を取り上げる。

●お大尽の登山
江戸時代、この一帯は幕府の天領で木材を切り出していた。明治に入ると実業家として活躍していた大蔵喜八郎がこの広大な地域を購入し、豊富な木材資源と豊かな水資源を利用して木材生産や製材、発電事業を始めた。明治40(1907)年、木材生産と水力発電を組み合わせた事業として製紙原料を生産する東海パルプを創業した。これが現在の特種東海製紙株式会社であり、1964年に国立公園となった以降も現在まで同社が所有している
大倉喜八郎が88歳の時(大正15[1926]年)、風呂桶、水、薪を持たせた多くの人夫と共に、自身はカゴや背負子に担がれて赤石岳に登り、頂上で風呂に入ったという。お大尽の登山である。

●赤石岳は最高の眺望
先日、私は二軒小屋から入り、千枚岳、荒川三山、赤石岳から椹島(さわらじま)へ降りた。この山行での感想は「南アルプスは山が大きい!」である。アップダウンが激しく、忍耐を要する登山が強いられる。そのご褒美のように「赤石岳からの眺望は最高」だった。今でも赤石岳からの360度の眺めが忘れられない。
ここで大倉喜八郎のように風呂に入りたいと心から思った。標高3121m赤石岳は日本で7番目の高さで一等三角点がある。

●美しい自然を守る
今回の山行でとくに感じたのは、会社が管理することの意味である。登山の出発地の二軒小屋ロッヂは快適に宿泊でき、下山してきた椹島には白籏史朗写真記念館があり、とても充実していた。また、森林開発や電源開発用に林道を会社として管理しているので、万が一の遭難などの際には利用できるかもしれない。
会社である以上、収益を上げなければならない。また収益を上げるために的確な投資も必要だろう。明治以降、脈々と存続してこれたのはこのバランスが良かったのだろう。日本の美しい自然を守るための一つの方法がそこにあるのかもしれない。

赤石岳。右下が赤石小屋

写真は「環境省ホームページ」より
https://www.env.go.jp/park/parks/index.html

 

日本山岳会理事
日本山岳救助機構合同会社社員
飯田邦幸

 

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